求人を出す前に、
自社の「入ってからの1週間」を書き出す
採用しても早い段階で辞めてしまうとき、条件や本人の意欲だけを原因にすると、会社側で直せる点を見落とします。まず確認したいのは、入社した人が最初の1週間に「誰から、何を伝えられ、どの仕事を任されたか」です。求人を出す前に受け入れの予定と実績を書き出し、説明漏れや担当不在を見つけましょう。
先に結論
この記事で押さえたいこと
●初出勤前から5日目までを、予定と実績に分けて記録する
●集合場所、道具、教育担当、到達目安を事前に決める
●1週間の実態と求人票を照合し、違いがあれば受け入れ側から見直す
この記事の目次
採用は、求人票を掲載して終わりではありません。入社初日に担当者が決まっていない、必要な道具が分からない、現場ごとに説明が違う状態では、新人は仕事以前の部分で迷います。
そこで、求人を出す前に「次の人が入ったら、最初の1週間をどう過ごすか」を台帳にします。立派な研修制度を作ることではなく、決まっていることと未決定のことを分けるのが目的です。
まず直近の受け入れを事実で書き出す
最近採用した人がいる場合は、記憶だけで振り返らず、勤怠、現場予定、道具の支給記録、担当者のメモなどを確認します。採用実績がしばらくない場合は、次の月曜日に新人が来る想定で書き出します。
現場で確認すること
初出勤の日時と集合場所を誰が伝えたか
到着時に誰が迎え、誰へ引き継いだか
作業着や保護具、腰道具を誰が準備したか
どの現場で、誰と、何の作業をしたか
終業時に質問や困り事を確認したか
「たぶん伝えている」「現場の誰かが教える」は未決定として扱います。担当者名、伝える時点、確認方法まで書けなければ、受け入れ時に抜ける可能性がある項目です。
「入社後1週間台帳」を1人1枚で作る
台帳は紙でも表計算でも構いません。ただし、予定だけを書いて終わらせず、実際にどうだったかを同じ欄で比較できる形にします。
現場で確認すること
基本欄:氏名、初出勤日、採用窓口、現場責任者、教育担当
日別欄:予定現場、集合方法、教える内容、任せる作業、必要な道具
実績欄:実際の現場と作業、説明済みの項目、本人から出た質問
対応欄:追加説明、道具の手配、担当変更、翌日以降に持ち越す事項
管理欄:記入者、確認者、記入日、最終更新日
採用窓口が採用決定時に台帳を作り、現場責任者が初出勤前に予定を埋めます。各日の実績は教育担当が記入し、1週間の終了時に経営者または採用責任者が確認します。予定と実績を分けることで、計画不足なのか、現場変更によるものかを判断できます。
初出勤前日までに伝えることを固定する
新人への連絡内容が担当者によって変わらないよう、初出勤案内をひな型にします。変更が出た場合は、誰が本人へ連絡したかも台帳に残します。
現場で確認すること
集合時刻、住所、入口、駐車場所、連絡先
服装、持参品、昼食や休憩に関する案内
会社支給、貸与、本人準備に分けた道具の一覧
当日の担当者名と、担当者が不在の場合の連絡先
予定している現場、作業内容、終業後の戻り方
作業着、安全靴、ヘルメット、保護具、腰道具などは、費用負担だけでなく準備する人と受け渡し時点まで決めます。資格や安全衛生上必要な教育、就かせられる業務の範囲は工事内容や立場によって異なるため、不明な点は元請、関係機関、専門家などへ確認してください。
初日は「仕事の入口」をそろえる
初日にすべてを覚えさせる必要はありません。先に、事故や行き違いを避けるための情報から伝えます。説明した側は、話したことではなく、本人が確認できたことを台帳へ記録します。
現場で確認すること
出退勤や現場移動の方法、遅刻・欠勤時の連絡先
立入範囲、保護具、危険箇所、緊急時の行動
道具や材料の置き場所、使用後の戻し方
指示を受ける相手と、分からないときに質問する相手
当日に任せる作業と、まだ任せない作業
終業時には、分からなかった言葉、困った場面、翌日の集合方法を確認します。質問がなかった場合も「問題なし」で終えず、担当者、道具、作業内容ごとに確認すると、説明漏れを見つけやすくなります。
2〜3日目は教える人と任せる範囲を固定する
技術が高い人が、必ずしも新人教育に向いているとは限りません。教育担当は、作業を分けて説明できるか、質問を受け止められるか、危険な行動をその場で止められるかも見て決めます。
朝に「今日教えること」と「任せる作業」を台帳へ書き、終業時に実績を追記します。現場変更があった場合は、変更理由と引き継いだ相手を残します。毎日違う人について説明が重複したり、逆に誰も教えなかったりする状態を防ぐためです。
本人の評価は「やる気がない」「覚えが悪い」とまとめず、道具の名称が分からない、指示の復唱がない、片付け場所を間違えた、など確認できた行動で記録します。
採用後の受け入れ方法を、同じ立場の会社と整理する
現場交差点の無料ルームでは、採用や定着に悩む工事店同士で情報交換できます。自社だけでは決めにくい教育担当や確認項目を考える場として活用してください。
4〜5日目は「できた・要確認・未実施」を分ける
1週間の目標は、一人前にすることではありません。次の週に何を任せ、何を引き続き教えるかを判断できる状態にします。
現場で確認すること
できた:説明を受け、決めた手順で実施できた
要確認:一度は実施したが、再説明や付き添いが必要
未実施:現場都合などで経験しておらず、評価できない
確認項目は、安全上のルール、道具の名称、報告や連絡、片付け、指示した作業などに分けます。教育担当の確認だけでなく、本人にも「まだ不安な作業」「説明を受けていないこと」を書いてもらいます。両者の認識が違う項目を、翌週の教育予定へ移します。
1週間の実態を求人票と照合する
台帳が埋まったら、求人票に書いている内容と実際の受け入れを並べます。求人票だけを良く見せるのではなく、実態と違う部分があれば、受け入れ方法を直すか、記載を見直します。
現場で確認すること
現場の地域、集合方法、直行直帰や会社集合の扱い
入社直後に担当する作業と、経験後に任せる作業
作業着、保護具、道具の支給・貸与・本人準備の区分
未経験者への教え方、教育担当、質問先
勤務条件や選考時の説明と、現場運用の食い違い
特に「未経験でも可」とする場合は、誰が何を教えるかまで社内で決めます。担当者を置けない時期なら、採用時期や配属現場を再検討する判断も必要です。労働条件の明示方法や求人票の表現に迷う場合は、利用する求人機関や社会保険労務士などへ確認してください。
台帳は採用のたびに更新する
台帳の管理者を採用窓口、内容の確認者を現場責任者などと定め、保管場所と閲覧できる人を決めます。個人情報や評価を含むため、現場の誰でも見られる場所への放置は避けます。
現場で確認すること
新人から同じ質問が出たら、初出勤案内へ追加する
道具や支給区分が変わったら、一覧と求人票を同時に直す
現場や教育担当が変わったら、引き継ぎ先と変更日を記録する
退職や配置変更があったら、性格で片づけず台帳の事実を確認する
ひな型を直したら、更新日と更新者を残す
求人を出す前の最終確認は、初日の担当者、必要な道具、1週間の予定、日々の記入者、週末の確認者が決まっているかです。空欄があれば求人票の表現を足す前に、社内の受け入れを整えます。採用後に起きるズレを、入社前に見つけるための台帳として運用してください。
読み終えたら、今日やること
自社の現状を一つだけ確認する
「求人を出す前に、自社の「入ってからの1週間」を書き出す」について、自社ではどうなっているかを書き出してください。決まっていない点や判断できない点が見つかったら、同業者や専門家へ確認する材料になります。
本記事は、現場での経験や公開時点で確認できた情報をもとに整理しています。契約・法令・制度・金額などは会社や時期によって条件が異なるため、実際に判断するときは公式情報や専門家へご自身で確認してください。
