入金と支払いのタイミングのズレ、資金繰りをどう備えるか
利益が出ていても、必要な日に預金が残っているとは限りません。特に建設業は、材料の仕入れ、外注費、給与などの支払いが工事代金の入金より先になることがあります。備えるには、売上額だけでなく、入金日と支払日を根拠書類から拾い、定期的に更新する運用が必要です。
先に結論
この記事で押さえたいこと
●決算書の利益とは別に、入金日と支払日を並べた資金繰り表を作ります
●予定額には根拠書類、確度、担当者、最終更新日を付け、未確定の数字と分けます
●資金不足が見えてからではなく、受注・請求・支払いの予定を説明できる段階で金融機関などへ相談します
この記事の目次
利益と預金残高がずれる理由を確認する
利益は、売上や費用を計上した時点で計算されます。一方、預金残高は実際に入金・支払いがあった時点で動きます。借入金の元金返済なども資金の動きとして確認が必要です。
建設業では、着工前後に材料費が発生し、工事中に外注費や給与を支払い、完成・請求後に工事代金が入る流れがあります。受注が増えたときほど先行支出が膨らみ、利益が出る見込みでも手元資金が減ることがあります。
最初に見るべきなのは月間売上ではなく、通帳残高がいつ、いくらまで減るかです。資金繰り表で最も残高が低くなる時点を探します。
資金繰り表を作る前に根拠資料を集める
予定額を記憶だけで入力すると、請求漏れや支払日の見落としが起きます。経理担当者は、次の資料を同じ基準日で集めます。
現場で確認すること
通帳とインターネットバンキングで確認した現在残高
契約書、注文書・請書、見積書に記載された工事代金と支払条件
工事台帳や請求一覧にある請求予定日、請求済みかどうか、入金予定日
材料・外注の発注書、請求書、締日と支払日
給与、税金、家賃などの固定的な支払い予定
借入先ごとの返済予定表
資料に金額や日付の食い違いがあれば、現場担当、経理、取引先のどこへ確認するかを決めます。請求額と入金額が一致しない案件は、差額の理由も台帳に残します。
表には金額だけでなく確度と根拠を記録する
資金繰り表は、期首残高、入金、支払い、期末残高の順で作ります。月単位で月内の不足を把握できない場合や、残高に余裕がない場合は週単位に分けます。
現場で確認すること
入金欄:案件名、請求額、請求予定日、入金予定日、入金済みか
支出欄:支払先、内容、金額、支払日、支払済みか
確認欄:確定・未確定の区分、根拠資料、確認した担当者
更新欄:最終更新日、変更前の日付、変更理由
受注見込みや概算原価を、確定した請求・支払いと同列に扱わないことが重要です。未確定の数字は別に表示し、その数字を除いても支払いが回るかを確認します。
現場・経理・経営者の確認範囲を分ける
現場担当は、着工・完成予定、出来高、追加や変更、検収の状況を経理へ伝えます。経理は、請求書の発行、実際の入金、支払予定、通帳残高を確認します。経営者は、残高が不足する時期と対応方針を決めます。
兼任している会社でも、確認項目は分けてください。同じ人が入力する場合も、工事台帳、請求書、通帳を照合し、どの資料で確認したかを残します。
更新は定例日に行うだけでなく、受注確定、請求日の変更、大きな発注、入金遅れがあった時点でも行います。予定を上書きするだけではなく、変更日と理由を残すと、遅れや見積不足の傾向を振り返れます。
入金と支払いを案件ごとに点検する
入金側は「工事が終わる日」ではなく、「請求できる条件」と「実際の入金予定日」を確認します。契約書や注文書の締日・支払条件と、現場の進捗、請求書の発行状況を照合してください。
現場で確認すること
完成・出来高の確認条件を満たしているか
追加・変更分の内容と金額が書面で整理されているか
請求書の提出先、締日、提出方法に誤りがないか
入金予定日が休日などで動く場合を反映したか
材料、外注、給与、税金、返済を漏れなく支出へ入れたか
追加・変更工事は、原則として着工前に内容を書面で整理することが資金管理にもつながります。金額を直ちに確定できない場合も、作業内容などを記載した書面を取り交わし、確定後に変更手続きを行う考え方が国土交通省のガイドラインで示されています。
資金不足が見えたときの対応順を決める
期末残高が社内で必要と決めた水準を下回る場合は、まず入力漏れや日付の誤りを確認します。そのうえで、次の順に対応を検討します。
現場で確認すること
未請求、請求書の不備、入金日の認識違いを解消する
契約に沿って請求手続きを早められる案件がないか確認する
不要不急の購入や発注時期を見直す
支払条件の変更が必要なら、期限前に相手と協議して合意を残す
不足時期、必要額、返済原資を整理して金融機関などへ相談する
外注先や仕入先への支払いを一方的に遅らせることを前提にしてはいけません。契約内容と実際の支払条件を確認し、変更が必要な場合は相手と協議してください。
資金繰り表の運用を無料ルームで共有
現場交差点の無料ルームでは、入金予定の拾い方や社内での確認手順など、資金繰り表を続けるための実務を建設事業者同士で共有できます。
融資相談に備えて説明資料をそろえる
相談は、預金が尽きる直前ではなく、受注状況や不足する時期を説明できる段階で行います。必要資料は窓口によって異なるため、事前に確認してください。
現場で確認すること
更新済みの資金繰り表と通帳の動き
決算書など金融機関から指定された財務資料
受注、工事進捗、請求、入金予定を確認できる資料
既存借入の残高と返済予定
必要資金の使い道、必要になる時期、返済原資の説明
金融機関の数に一律の正解はありません。複数行への相談には比較や依存分散の面がありますが、説明や借入管理の負担も増えます。信用保証制度を含め、複数窓口へ相談する場合は相談状況を隠さず共有し、同一資金の申込みの扱いを金融機関や信用保証協会へ確認します。
資金繰りを毎月の経営判断に組み込む
資金繰り表は作成して終わりではありません。社内で、確認日、入力担当、承認者、不足と判断する基準、報告先を決めます。
現場で確認すること
経理が予定と実績を更新する日
現場担当が進捗や請求条件の変更を報告する期限
経営者へ報告する残高水準と不足時期
予定と実績に差が出たときの原因記録
翌月以降へ変更内容を反映する手順
売上や利益だけでなく、「いつ入って、いつ出るか」を継続して確認することで、支払いの山と相談が必要な時期を早めに把握できます。
判断する前の注意
融資・信用保証制度の条件や必要資料は、時期、地域、申込内容によって異なります。最新情報は、日本政策金融公庫(https://www.jfc.go.jp/n/finance/keiei/support-plus/detail/materials.html?id=444)、全国信用保証協会連合会(https://www.zenshinhoren.or.jp/basic/)、中小企業庁の相談窓口(https://www.chusho.meti.go.jp/soudan/soudan_03.html)で確認してください。契約上の支払条件や追加工事は国土交通省の建設業法令遵守ガイドラインを確認し、個別の融資、税務、契約については、金融機関、信用保証協会、所轄行政庁、税理士、弁護士などへ相談してください。
読み終えたら、今日やること
自社の現状を一つだけ確認する
「入金と支払いのタイミングのズレ、資金繰りをどう備えるか」について、自社ではどうなっているかを書き出してください。決まっていない点や判断できない点が見つかったら、同業者や専門家へ確認する材料になります。
本記事は、現場での経験や公開時点で確認できた情報をもとに整理しています。契約・法令・制度・金額などは会社や時期によって条件が異なるため、実際に判断するときは公式情報や専門家へご自身で確認してください。
