「とりあえず現場行けば分かる」が通じなくなってきた理由
「とりあえず現場行けば分かる」という言葉で新人を送り出す場面は、まだ多くの現場で見られます。送り出す側に悪気はなく、自分もそうやって育ってきたという自負もあるはずです。ただ、この教え方が機能しにくくなっている理由があります。
この記事の要点
・残業時間の上限が決まり、教える時間そのものが限られるようになった
・若い世代ほど、事前に見通しが分かる説明を求める傾向がある
・「見て覚える」は教える側の負担が大きく、属人化しやすい
送り出したあと、新人が不安そうな顔で現場に立ち尽くしているのを見たことがある人は少なくないでしょう。「そのうち慣れる」と思っていたのに、数日後には来なくなっていた。そんな経験をした経営者にとって、原因を突き止めるのは簡単ではありません。
なぜ今、通じにくくなっているのか
「とりあえず現場行けば分かる」は、時間をかけて経験させることで技術を身につけさせる、昔ながらのやり方です。ベテランの職人がこのやり方で育ってきたのも事実で、否定されるべきものではありません。ただ、今の建設現場を取り巻く条件は当時とは変わっています。2024年度から時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、以前のように時間をかけてじっくり教える余裕が取りづらくなっています。
本人が感じている不安
初めての環境に入るときに、事前にある程度の見通しを求める傾向は、世代を問わず一般的な心理として知られています。「行けば分かる」という説明は、本人にとって不安の材料になりやすいということです。何をすればいいか分からないまま現場に立たされることは、想像以上に心細いものです。加えて、残業規制で現場に長くいられる時間そのものが短くなった今、ベテランが横について都度フォローする余裕も昔より限られています。だからこそ、行く前の数分の説明が、以前よりも重みを増しています。
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代わりに何をすればいいか
全てを言葉で説明する必要はありません。「今日は何をする現場か」「誰について、何を見ておけばいいか」を、行く前の数分で伝えるだけでも変わります。見て覚える教育自体をやめる必要はなく、見る前に的を絞ってあげることが、今の働き方に合わせた調整です。
現場に着いてからのフォローも忘れずに
行く前の説明だけで満足せず、現場に着いた後も「さっき伝えた通りで大丈夫そうか」と一声かけるだけで、本人の安心感は変わります。説明した内容と実際の現場が食い違っていることもあるため、着いてからのひと言確認が、思わぬ手戻りを防ぐことにもつながります。
「そのうち慣れる」を待つより、最初の数分の説明で不安を減らしてあげる方が、結果的に早く現場に馴染んでもらえます。育て方を変えるというより、ほんの少し手間を前倒しするだけの工夫です。この小さな前倒しが、数か月後の定着率に静かに効いてきます。
