小さな建設会社は銀行を何行持つべきか
銀行は、多ければ安心というものでも、1行にまとめれば十分というものでもありません。確認したいのは口座の数ではなく、必要なときに自社の数字を説明できる金融機関があるか、複数の取引を社内で管理できるかです。まず資金繰りと現在の銀行取引を整理し、その後に維持・追加・集約を判断しましょう。
先に結論
この記事で押さえたいこと
●銀行数ではなく、日常決済と資金相談を担う金融機関があるかで判断する
●請求・入金と材料費、外注費、給与、税金、返済を資金繰り表に並べる
●金融機関取引台帳を作り、経理の更新時点と経営者の確認時点を決める
●複数の金融機関や信用保証協会へ相談するときは、相談状況を隠さず確認する
この記事の目次
銀行数に一律の正解はない
銀行数を決める基準は、売上規模だけではありません。入出金の量、借入の有無、今後の設備・運転資金、経理担当者の管理能力によって適切な形は変わります。口座だけ増やしても、資料提出や説明ができなければ、資金調達の選択肢が自動的に広がるわけではありません。
「日常取引を集める先」「資金需要を継続的に相談できる先」「急な変化があったときの相談先」という役割を整理し、現在の取引先で足りるかを確認します。
最初に金融機関取引台帳を作る
通帳を集めるだけでなく、口座、借入、担当窓口を一つの台帳にまとめます。休眠状態の口座や、経営者しか把握していない借入も対象です。
現場で確認すること
金融機関名、支店名、口座の用途
入金、支払い、給与振込など日常取引の内容
借入残高、返済予定、信用保証の利用状況
担保や保証について金融機関から説明を受けている内容
担当部署、担当者、最終相談日
提出した決算書や試算表と提出日
インターネットバンキングの管理担当者と承認権限
台帳の更新担当は経理、確認者は経営者など、役割を分けます。口座開設・解約、借入、担当者変更があった都度更新し、月次締めでも記載漏れを確認します。
銀行を増やす前に資金需要を確認する
利益が出ていても、入金より先に材料費、外注費、給与などを支払えば預金は減ります。資金繰り表に予定を並べ、いつ、何のために、どの程度の資金相談が必要になりそうかを把握します。
現場で確認すること
工事ごとの請求予定日と入金予定日
材料費、外注費、給与、固定費の支払日
税金と借入返済の予定日
受注済み工事の着工時期と先行支出
入金遅延や追加工事が生じた場合の影響
通常は月単位、資金の動きが厳しい時期は週単位で確認します。予定と実際の通帳残高がずれたら、経理が理由を追記し、経営者が次回の支払い前に確認できる運用にします。
1行集中の利点と負担分散を比べる
1行に集めると入出金を把握しやすく、金融機関にも取引全体を説明しやすくなります。一方で、融資方針や担当体制が変わった際、ほかに自社の状況を説明している相談先がなければ、選択肢は限られます。
現場で確認すること
追加を検討する場面:今後の資金需要が見えているのに、現在の金融機関以外へ相談できない
現状維持を検討する場面:現在の相談体制で必要な機能を満たし、複数口座の管理負担を増やせない
集約を検討する場面:用途を説明できない口座があり、手数料、残高、権限管理だけが残っている
メインとサブの役割を先に決める
複数行と付き合う場合も、取引を無計画に分散させません。各金融機関に何を任せ、どの資料を共有するかを社内で決めます。
現場で確認すること
メイン:主要な入出金、借入相談、定期的な業績説明
サブ:将来の資金需要や地域の制度について相談できる関係づくり
経理担当:残高、返済予定、提出資料を台帳で一元管理
経営者:相談内容と借入全体を確認し、説明の食い違いを防ぐ
サブ口座を持つことと、融資を受けられることは別です。少額の取引実績だけを目的にせず、自社の事業内容や資金繰りを継続して説明できるかを重視します。
相談前に同じ説明資料をそろえる
資金不足が迫ってから書類を探すのではなく、相談先が変わっても同じ内容を説明できる状態にします。
現場で確認すること
直近の決算書と、必要に応じた試算表
請求・入金・支払いを反映した資金繰り表
既存借入の残高、返済予定、相談中の案件一覧
注文書、契約書、請求書など受注と入金予定を確認できる書類
必要資金の使途、必要になる時期、返済原資の考え方
信用保証制度は、中小企業、金融機関、信用保証協会の三者で成り立ちます。複数窓口へ相談する場合は、同じ資金についてどこまで相談しているかを伝え、申込みの扱いを各金融機関や信用保証協会へ確認してください。
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口座数の結論をまねるのではなく、同規模の建設会社がどんな台帳や確認手順で管理しているかを、自社の見直し材料にできます。
社内の更新ルールを決める
銀行取引を経営者の記憶だけで管理しないため、台帳と資金繰り表について担当者、確認時点、更新手順を決めます。
現場で確認すること
経理担当:月次締めで通帳、返済明細、台帳を照合する
工事担当:請求予定や入金条件が変わった時点で経理へ伝える
経営者:月次締め後と金融機関への相談前に、残高と今後の不足時期を確認する
更新時:変更日、変更理由、更新者を残し、古い情報との取り違えを防ぐ
担当変更時:オンライン権限、連絡先、提出資料の保管場所を引き継ぐ
口座を追加する場合も、台帳の登録、利用目的、承認権限、月次確認の担当まで決めてから運用を始めます。管理できない口座を増やさないことも重要な判断です。
維持・追加・集約をこの順で判断する
まず現在の銀行取引を台帳化し、次に資金繰り表で将来の相談時期を把握します。そのうえで、現在の金融機関との関係と社内の管理能力を比べます。
現場で確認すること
現在の金融機関へ業績と資金予定を定期的に説明できているか
別の金融機関へも同じ資料で説明できる状態か
資金不足が表面化する前に相談を始められるか
複数口座の残高、返済、権限を経理が管理できるか
相談先を増やす目的を社内で説明できるか
一つでも説明できない項目があれば、先に資料と運用を整えます。銀行数はその結果として決めるものであり、数だけを目標にする必要はありません。
判断する前の注意
本記事は一般的な確認手順を整理したもので、融資の可否や条件を断定するものではありません。実際の相談では、取引金融機関、地域の信用保証協会、中小企業庁の相談窓口、税理士などへ自社資料を示して確認してください。制度や取扱いは変わる可能性があるため、日本政策金融公庫(https://www.jfc.go.jp/n/finance/keiei/support-plus/detail/materials.html?id=444)、全国信用保証協会連合会(https://www.zenshinhoren.or.jp/basic/)、中小企業庁の相談窓口(https://www.chusho.meti.go.jp/soudan/soudan_03.html)の最新情報も確認してください。
読み終えたら、今日やること
自社の現状を一つだけ確認する
「小さな建設会社は銀行を何行持つべきか」について、自社ではどうなっているかを書き出してください。決まっていない点や判断できない点が見つかったら、同業者や専門家へ確認する材料になります。
本記事は、現場での経験や公開時点で確認できた情報をもとに整理しています。契約・法令・制度・金額などは会社や時期によって条件が異なるため、実際に判断するときは公式情報や専門家へご自身で確認してください。
